掃除とトニー滝谷
家に帰って風呂に入りながらビールを飲んでいる。疲れたが気分は悪くない。
家を出る前に大掃除をした。年末にやるような大掃除だ。あいにく年末は意味がわからないほどに忙しかったから、何一つ掃除が出来なかった。ゴミだめのような部屋で1ヶ月以上を過ごした。まあその間に我が家に遊びに来たのは北海道在住の男友達一人だったので、何一つ問題はなかったが。
部屋のゴミを全て捨てて、散らかった衣類を洗濯して、散らかった本も整理整頓して、掃除機をかけた。それだけでかなり満足はしていたのだが、勢いづいて風呂とトイレと洗面台も掃除した。風呂がきれいだ。気分が良い。ビールが美味い。
昨日は映画を借りてきて見た。一つは「天空の城ラピュタ」。何回見るんだ、もうかれこれ20回ぐらい見てるんじゃないだろうか。もう一つは「トニー滝谷」。こっちは初めて見たので、少し感想を書こう。
原作は村上春樹の短編集「レキシントンの幽霊」から。監督は市川準、音楽は坂本龍一。そして主演はイッセー尾形と宮沢りえ。
原作者も監督も音楽担当も私は結構好きだが、何と言っても心を惹かれたのは主演の二人だ。特にイッセー尾形は、私が一番好きかもしれない役者だ。勿論宮沢りえも「北の国から’95〜秘密〜」以来大好きな女優だ。
そして作品の率直な感想。
まず一言で言えば、後味が悪い。見終わった後に「ああ面白かった」と言えるタイプの映画ではない。とにかく切ない感情をひたすらに描こうとした映画な為というのもある。ハッピーエンドでもなければバッドエンドでもない。物語が「開いた」まま終わるオープンエンドでもない。敢えて言えば、物語が閉じたままで終わるクローズエンドだろうか。そして、たまらなく切ない。
これから見る方の為にも、ストーリーには一切触れないでおくが、とにかく見所はイッセー尾形の演技だ。コミカルな役所をやらせれば超一流の彼であるが、シリアスな演技もたまらない。倒錯しそうでしないギリギリ感、静寂の形で表象化する激情。切迫感は、イッセー尾形によって穏やかに演じられた。
私はここ最近の自分の感情と偶然一致する所が多かったので、かなりそういった部分には目を奪われた。
良い悪いの二元論で論じるのはある意味では逃げであるが、敢えてその二元論を採用するならば、「良かった」。村上春樹風に言えば「悪くなかった」。
そしてぼくはビールを飲んだ。
村上春樹のこういう表現が、時々癪にさわる。
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