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2006年12月10日 (日)

幸いあれ

幸いあれ

深夜二時半、帰宅。数回前に書いた怒涛の五連続ライブの三回が終わる。疲労困憊。しかし好きな事をやって、更に金まで頂いている訳だ。文句は何一つない。寧ろ有り難い。

今日は原付(ミヒロ号)で移動していた為、演奏後の店でのビールは自粛。つい先ほどまでピアノを弾いていた「メノモッソ」は世界中のビールを集めたビールバーであるにも関わらず「乗るなら飲むな」の精神を貫徹。本当はシメイ(ベルギービール)が飲みたかった。しかし我慢。優良ドライバーとは他でもない私の事を言うのだ。

だが飲みたい。

疲れを癒やす一杯があっても罰は当たらない筈だ。それぐらいはこの二日間で稼いだのだ。

そう思い、帰り道、河原町今出川を少し下がった所にあるファミリーマートに寄る。ビール購入の為。

当然シメイの青は置いていない。それに比肩するもの、と思案し、エビスの新作「琥珀エビス」とラガーの新作「復刻ラガー(明治)」を購入。添付の写真の通りだ。ちなみに後ろに写っているのは神様Ray Charles。特に意味は無い。格好良い。

購入の際、私はちょっとした人間交差点を横断した。

深夜二時にコンビニのバイトを勤めるのは初老の男性(ひょっとして店長だろうか)。これだけで十分にドラマチックと言えなくもないが、私の心を打ったのは彼の潔いまでに丁寧且つ低姿勢な接客態度であった。私の如きゴミの様な人間にかくも深く頭を垂れられるとは、恐縮を通り越し少々気の毒にすら感じられた。

しかし店を後にして私は想像するに至った。彼の過去を。不必要な苦労を重ね、頭髪の色は落ち、いささか後退した彼の額の事を。

私は原付を再び運転しながら、いたたまれないような気持ちになった。

それは同情ではなかった。

それは憐れみではなかった。

私は何か胸の奥を締め付けられるかのような心地であった。

もうすぐクリスマスだ。世の中の不愉快なカップル共に栄光は要らぬ。主よ、かの初老の男性にこそ栄光を。私はクリスチャンではないが、そう思った。グローリー、ハレルヤ。

貧しき者は幸いなり。とは聖書の言葉であったか。失念した。

平等な世の中などは望むべくもない。命は不平等で、幸福は不平等だ。しかし、ささやかで良い。彼の残り少ない2006年が幸いたらん事を。珍しく他人の幸福を心底から祈る自分を発見し、私もいささか戸惑っている。

そうそう、私は十二分に幸せだ。買ってきた「琥珀エビス」が思いの外美味いから。

さあ、今から「復刻ラガー(明治)」だ。

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コメント

泣けますね。
必要以上に親切なガードマンに胸を打たれたりする東京ライフです。
エビスの新作はうまいですね。
ほんまに琥珀色やし。
赤味がかっててきれいです。

投稿: ヒロセ | 2006年12月12日 (火) 05時07分

ヒロセへ
発泡酒に慣れすぎてしまった口には、かなりエビスは新鮮に響くね。また一緒に飲みたいものだ。
君を真似て(かなり羨ましかったので)先日モツ鍋を敢行してみた。あれは神の食い物だな。

投稿: ふくしまたけし | 2006年12月12日 (火) 23時18分

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