趣味は音楽鑑賞
本日の全ての仕事が終わって、一息つくためにジャズ喫茶「ラッシュライフ」へ。レコードを聴きながらコーヒーを一杯だけ飲んで帰って寝よう、そう思っていた。何故なら今日はまたしても風邪なので。明日も朝から早いし。
が、店を出て帰路に着いたのは午前1時。全てラッシュライフのマスターが悪い。Eubie BlakeとFats WallerとEarl Hinesを聴いてゴキゲンになって、さ、ぼちぼち帰ろうかなと思った所で鳴り出すErroll Gerner。帰れなくなるじゃんか、そんなのかかったら。
その後は立て続けにJames P JohnsonからBilly Strayhornの雪崩式。フィニッシュホールドは得意のRandy Weston。
完敗ですよ、もう。ぐうの音も出ませんよ。あーあ、素晴らしかった。
さて、今日は音楽を聴く、という事に関して少し真面目に(普段は不真面目なので)書いてみる。
まず初めにわかりきった正論を一発。
音楽の聴き方は千差万別。本人が愉しめる形で愉しんで聴くのが一番良い。
当然ですね。反論の余地もない。全くもって正論だ。
人それぞれの愉しみ方があって当然だ。
だからね、それじゃ駄目なんだ。
戦争はいけない、殺人はいけない、と正論を並べ立てても絶対に戦争も殺人もなくならない。それと一緒だ。そういう正論は自己満足的な人権屋さんに言わせておけば良い。本当に戦争や殺人を憎むのであれば、正論を吐くのは見当違いも良い所なのだ。
ちょっと話が逸れたな。要は正論に頼りすぎるのは良くないという事。
閑話休題。音楽を聴くという事について。
音楽を聴く事によって「そこから何かを得る」目的があるという前提で話を進めます。
こうした前提がある以上、音楽を聴く事にはある水準以上の集中力を必要とする、というのが私の意見である。これが今日の話の本筋。
喩えば、ジャズミュージシャンを志す者(乃至ジャズミュージシャン)がジャズを聴く際、かかっているレコードに対しては可能な限り神経を研ぎ澄まさなくてはならない。理由は我々凡人の「耳の悪さ」である。(そうそう、私を含めた凡人を相手に書いてますから、天才の人は以降読まないで下さい)
我々は、耳が悪い。当たり前だ。人間なのだから。一枚のレコードに収められている真の情報量を100とするならば、何気なく聴いていたら1も聞き取れない。これは間違いない。
必死になって全神経を傾けて聴いた時で、聞き取れる情報量はやっと2から3ぐらいになるのではないだろうか。それぐらい我々人間の感覚は鈍感だ。一回聴いただけで微に入り細に到るまで記憶する、モーツァルトみたいな天才も稀にいるが、これは例外中の例外。もっと凡庸な話だ。
しかし、ここには微小な差ながら、確実に差が存在する。1%未満と3%、差は歴然だ。これを日々の積み重ねとすれば、何気なく音楽を聞き流している人間と神経を研ぎ澄ましながら聴いていた人間とでは、一年もすれば得た情報量は大きく変わる。
音楽の修練は大きく分けて四つに分類される、と私は考えている。
一つはplay、演奏する事、遊ぶ事。
次にfeel、感じる事。
更にthink、考える事。思い悩む事も時には必要だ。ブルースリーの「考えるな、感じるんだ」という言葉は、時折当てはまらないと私は思っている。
そして上に挙げた三つ全てに先立つもの、listen、聴く事。
まず「聴く」事ありきなのだ。それは共演者の出した音を聴く事でもあり、自分の出した音を聴く事でもあり、聴衆の声を聴く事でもあり、無論レコードを聴く事でもある。
取り留めもなくなって来たし、長くなってきたので纏めよう。
集中して音楽を聴いてみれば、かなり色んな発見がある。最近私が気付いたのは、Thelonious Monkの紡ぐサウンドの裏側にJames P Johnsonのストライドピアノが聞こえてくる、という事実。モンクはずっと好きで10年ぐらいは聴いてきたが、やっとその事実に辿り着いた。つまり私はモンクについてはまだまだ知らない事だらけだという事だ。ジェームスPについても知らない事が多い。それを知らなくてはモンクはわからない。多分この調子で聴いていけば、10年後にはまた再び私はモンクについて新たに気付く事がある。全ては積み重ねだ。
感性や独自性といった安易な言葉で逃げ道を作る人をよく見かけるが、それはあまりにも傲慢で且つ危険だ。
ジャズは伝統音楽であり民族音楽である。黄色い余所者の私はもっと深く頭を垂れ、ジャズを愛していかねばならない。余りに一方通行な片思いも、しつこく思い続けければいつかは成就するかも知れない。しないかも知れない。
彼女にこちらを振り向かせる事が出来るかどうかはわからないが、彼女に偏執狂的な愛情を注ぐ事ならば出来ると言い切れる。好きだから。
よし、変態になろう。
本日の結論はこれだ。
ちなみに本日11月14日は北山モジョウエストでライブ。変態になれるように頑張ります。同様に変態になりたい人は来て下さい。一緒に変態になりましょう。
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