和と伊の融合
昨日に引き続き食べ物の話を。
数日前に米がなくなった、と書いた。途方に暮れていたが、近所のスーパー「ナナ」に寄ったらうどんが一玉30円で売っていたので7玉買った。1日に2食以上食べる事はないので、最低4日はこれで耐えられる、と思い安堵していたが、そのうどんも今日、底をついた。
別れを惜しむかのように月見うどんを大切に啜った。花に嵐のたとえもあるぞ、さよならだけが人生だ。そんな事を思いながら。
さて、明日から何を食って生きよう。私は人なので、霞を食っては生きていけない。かと言って金はない。家をくまなく探してみたら、思いがけない宝を発見した。
スパゲティだ。400g入りのスパゲティが半分ぐらい残っている。これは素晴らしい。
私は料理が苦手であるので、凝った料理はしない。正確には「出来ない」。しかし、その料理の才能の無さは、思いもよらない名料理を生み出す事もある。本来ならば、一子相伝の秘技であり、門外不出の料理であったが、私の発明した料理を今日は紹介しよう。その名も「和風スパゲティ」だ。メモの用意は宜しいだろうか。
まず、パスタを茹でる。茹で加減は所謂「アルデンテ」。若干硬めなくらいが丁度良い。そしてこの時に大切な事なのだが、それはイタリア人の気持ちになりきって茹でる事だ、ボンジョルノ。つまり茹でている最中に女性に会ったら、それが誰であろうと口説かなくてはならない。それが礼儀だ。セニョリータ、君は僕の太陽だ、などと良いながら。戦場の兵士がいつ何時も誰かに襲われる事を想定しながら生活するように、パスタを茹でている時は、いつ何時も女性を口説き落とす事を想定しながら茹でなくてはならない。そこは言い換えれば戦場なのだ。油断は死に繋がる。
さて、茹で上がったらもう日本人に戻って頂いて構わない。秘すれば花、の精神を思い出すのだ。つまりチラリズムを。何の事だ。
茹で上がったならば、湯を切って、少々のオリーブオイルを用いてフライパンで炒める。その際に、上からポン酢を垂らす。これによって、イタリア風のスパゲティに、和の心が加わる訳だ。第二次世界大戦の負け組同士のコラボレーションだ。ここにドイツの食材が加われば、負け三国同盟スパゲティ、となる所なのだが。
ポン酢が均等に麺に絡まったら、それを皿によそる。何も具のない蕎麦を「掛け蕎麦」と言うように、これは一見すれば「掛けスパゲティ」である。
ここで登場する極上のスパイスは、「想像力」である。イマジネーションだ。食す前には、そこに茄子とアサリが彩られている、と自らに念じる。強く念じるのだ。テレビを付けて、料理番組が放送中ならばそれを見ながら、というのも良いだろう。そして一番のキーポイントだが、食べる前には必ず「おお、美味そ…」と言う。必ず。声に出して。
一口食したならば「ああ、うめえ…」と感嘆のため息を一つ。必ず。声に出して。
そうする事で、それは実際に美味くなる。つまり私の紹介した料理の正式名称は「ポン酢風味の和風スパゲティ、イマジネーション和え」だ。多分もうじき空前絶後のブームがやってくるに違いない。
という事で、私は明日から上記の「ポン酢風味の和風スパゲティ、イマジネーション和え」を日々食する事にする。いずれ私はセリエAで活躍するかも知れないが、その際にはチームメイトのイタリア人にこの和と伊の融合を教授しようと考えている。
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コメント
ぐはは!
おもしろすぎです。
おれもやろう。
イマジネーション添えよう。
声出すんは大事ですね。
それが一番の調味料かも。
投稿: ヒロセ | 2006年10月 7日 (土) 03時12分
相変わらず面白いことやってるね。今度会ったら死ぬほどパスタをご馳走するよ。
投稿: ヤマ | 2006年10月 7日 (土) 04時48分
ヒロセへ
手前味噌だが、この文章は我ながら面白く書けたなと思っているんだ。笑ってくれてありがとう。素直に嬉しい。ファック貧乏!と思ったり、逆に貧乏がエラく愛おしく思えたり。この感覚、君ならわかる筈だ。
投稿: ふくしまたけし | 2006年10月10日 (火) 00時21分
ヤマへ
パスタはいらない。煮え湯をたくさん飲ませてくれ。
嘘。
酒を飲もうよお。お酒をさあ。ウンザリするぐらいに飲もうよお。
投稿: ふくしまたけし | 2006年10月10日 (火) 00時25分