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2006年8月23日 (水)

釧路の夜を記憶から抹殺するために

東京の実家からである。明日の昼から、また鈍行列車に揺られて、えっちらおっちらと京都まで帰るのだが、その前に、ほぼ中途で終わってしまっていた旅の日記をきちんと完成させようと思うに至った。けじめだ、けじめ。まずは釧路編。

何日間が既に経過しているため、思い出し乍ら書く。勿論、メモなどを取っていた筈もない。なので、全ては私の朧ろげな記憶が頼りなのだが、私の記憶力は人一倍悪い。ならば、思い出せない部分は、さもそれが実際に起こっていた事であるかのように、嘘を書こう。

この文章を読んでくれている皆さん、普段からそうですが、私はいつもここに真実ばかりを書いている訳ではありませんよ。面白く書くためには、嘘だって書きます。そもそも、真実なんてないんだ、というのが私の思考の出発点なんです。。虚構の中に、真実らしきものを見せる事こそ表現者の使命なんだと、私は思っております。

閑話休題。北海道の事を。

Tの運転する車が釧路の街に着いたのは、夕方の5時ぐらいであった。

釧路に向かうまでの道すがら、Tの車の中で、私たちは一青窈(ひととよう)という人のCDを聴いた。Tの車にあったのだ。彼と私の音楽の好みは、ジャズにおいては非常に近しい所があるのだが、それ以外のジャンルの音楽となると、その趣味は大きく食い違う。ジャズ以外ならば、私はクラシックやフォークソングが好きだ。Tは、ハードロックやパンクロックが好きだ。かみ合う部分は、極めて少ない。そんな私たちの音楽的嗜好が珍しく一致したのが、一青窈であった。

Tは、彼女の声が好きだし、彼女の顔が好きだ、と言った。

私は、彼女の言葉のセンスが好きだし、彼女の顔が好きだ、と言った。

一青窈の顔は、どうやら私にもTにも共通の、「好きな顔」であったらしい。そうだ、女の好みは似ていなくもなかったのだ、と思い出す。少し、クセのある美人がお互い好きだったな。

聴いていたのは、「月天心」というアルバム。初期のアルバムであろう。彼の車のCDチェンジャーは、何度もおなじCDを繰り返しかけるため、結局三日間で20回ほどこのCDを聴いた。ええいああ、という独特の歌い回しが、しばらくは頭にこびり付いて離れなかった。

釧路についてから、私とTの目的は、秋刀魚であった。秋の魚を八月に、という事にはいささかの違和感もあったが、そう言えばここは北海道だと気付く。秋の到来も私の感覚よりも早くて然るべきなのだ。

いくつかの居酒屋を様子見た後、一番秋刀魚の美味そうな店に入る。2、30分待たなくてはならない、と言われるが、Tと二人で何を食おうか、何を飲もうか、と相談しているうちに待ち時間となる。

秋刀魚は美味かった。酒も美味かった。以上。

必要以上に簡単に書いたのには訳がある。釧路の夜はここからが本番であったのだ。

二軒目に向かう途中、地域の祭で路上演奏をするファンキーなジャズバンドに出会う。彼らの特徴は、演奏が下手だ、というのが一点だ。映画『スィングガールズ』を御覧になった方はいるだろうか。少女たちのジャズバンドが練習を重ね、徐々に上達していく、という話なのだが、その未だ未熟な時期、その演奏を髣髴とさせるほどの下手さであった。にも関わらず、である。私たちはかぶりつきで見入ってしまった。

演奏とは無関係に踊り狂う意味不明なホスト風の男。そして、客席で強烈なテンションで踊るかなり太った女性。肉が揺れる。リズムに合わせて。そんじょそこらのお笑いライブを見るよりもよっぽど面白かった。ゲラゲラと笑いながら、小一時間ほどを過ごす。私もTも満足した。

その後、なぜか北海道、釧路であるにも関わらず、阪神タイガースファンの経営する「虎や」という店で飲み、さあ、どうしようか、とTと思案に暮れながら釧路の街を彷徨った。

そう、ここからが本番なのだ。

見つけてしまったのは「赤ちょうちん横丁」という、多分釧路でも最底辺の飲み屋街。喧騒と混沌の言葉がよく似合う飲み屋街を訪れてしまってからが私たちのワンダーランドの始まりであった。

暖簾をくぐった先には、3畳ほどのスペースにぎゅうぎゅうに詰め込まれた客・客・客。そして店主は若干日本語の不自由な美人の女性。周りの客が教えてくれる。

「ああ、この子ね、カイちゃんといって、ハーフだから少し日本語は苦手だけど許してね」

ほう、まあ、そんな事はどうでも良かったのだが、会話の流れで聞いてみる。

「どことどこのハーフですか?」

カイちゃんは答える。

「中国人と中国人よー」

そういうのはハーフとは言わない。むしろ純血と言う。

とりあえず、酒を頼もう。焼酎を下さい。はい、ええ、ロックで。

出てきたのはボトル。鏡月グリーン。目の前に、どん。

「たくさん飲んで下さいねー」

もう何でもアリだな。

隣に座ったオバちゃんと意気投合する。フィギュアスケートの先生だと言う。おお、何だか北海道っぽい。釧路っぽい。

オバちゃん、飲む。オバちゃん、酔っ払う。

私、飲む。私、ますます酔っ払う。

Tがふとこちらを見たら、抱き合いながら私とオバちゃんがディープキスをしていたらしい。記憶には、ない。いや、若干ある。出来れば抹殺したい記憶である。もう、私は何をしているんだろうねえ。

結局、その後、オバちゃんとTと三人で怪しげなスナックに行った辺りで私の記憶は完全に飛んでいる。スナックからの帰り道、私とオバちゃんが二人で暗がりに行くのを見て、Tは

「ああ、ホテルにでも行くのかな」とウンザリしたらしいが、その五分後ぐらいに「恐かったよう・・・」と私が逃げてきた、との事。

うーん、釧路に行っても馬鹿は、馬鹿、である。

次は帯広、富良野、旭川編です。

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コメント

Tくんによろしくね。

おれもひととよう大好きだよ。ライブもいった。

ちなみに彼女の「もらいなき」を80%に回転数を落とすとひらいけんになります。

投稿: とりい | 2006年8月23日 (水) 23時26分

とりいさんへ
ひととよう、いいですね。ライブは羨ましい。
いつ書けるかはわかりませんが、なるべく近々書くつもりの帯広~旭川編には、「まーくん」という名前の、すごい悪いやつが出てきます。また更新されたら読んでやってください。

投稿: ふくしまたけし | 2006年8月24日 (木) 11時23分

面白い夜だったのねぇ。
福島君を通して、私も擬似体験できているようで、楽しいです。
おばちゃんとの一件、キスは事実で、途中で逃げ帰って来た、というのは脚色かしら?
というか、その後、起こった事を記憶から抹消したいが為の現実逃避?(笑)
真実は闇のままの方が面白そうね。
釧路って、面白いところなのね。ススキノより面白いのかしらね。

投稿: モトクロス | 2006年8月26日 (土) 00時10分

北海道の旅、満喫できてなにより♪
ひととようが主演の「珈琲時光」っていう映画があります。 見た?? 
邦画らしい、ゆったりしたストーリーなので、見てるうちに寝てしまいそうになるかもやけど、ひととようが綺麗よ☆ 
彼女が歌う主題歌も結構良いです。 
舞台は東京の下町。 
気が向いたらビデオやさんで探してみて♪

投稿: すみ | 2006年8月27日 (日) 12時15分

モトクロスさんへ
とりあえず、「全て事実です」とは言っておきます。そう、あなたの言うとおり、真実は闇の中の方が面白い。そもそも人が何かを伝えようと思った瞬間に、真実は全て虚空に消えうせ、「意志」だけがそこに残る、というのが僕の意見です。真実が無いのと同時に、虚構なんてものも無いのかも知れない、と思います。
ススキノは行った事ないんですがね、面白いんでしょうか。僕はやっぱりネオンギラギラ、赤提灯ぼんやりみたいな所がどうやら好きみたいです。育ちが悪いからでしょう。

投稿: ふくしまたけし | 2006年8月28日 (月) 19時44分

すみさんへ
東京の下町が舞台、っていうのは僕にとったら結構魅力的ですね。今度探してみます。
しかし、一青窈の話題は、本当にカレーライスにおける福神漬けか或いは水、ぐらいの勢いで書いたのに、二人にも食いつかれてしまった。一青窈のパワーはすごいなあ。

投稿: ふくしまたけし | 2006年8月28日 (月) 19時47分

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