« 本州脱出目前 | トップページ | 箸休め的に更新します »

2006年8月18日 (金)

不安定精神再生工場

北見から少し西に離れた所、常呂郡という所に私はいる。表では昨日の夜半から降り続く雨のせいで、周囲の畑が田圃のように変化していっている。着いた時には感じなかったが、今日は少し肌寒い。あくまで、快適である、というレベルを超えない程度の肌寒さだ。灼熱の京都からはるばるやって来た私からすれば、これぐらいの肌寒さは避暑というレベルでは大分心地良い。

という所まで書いた所で、今私が居候している家の主人、Tが帰って来た。今日はこれから二人で温泉に行く予定だ。文章は一度中断する。

再開。温泉はとても気持ち良かった。
北海道に入って三日目になる。満足か不満足かで言えば、満足している。

ふとある事に気がついた。私はピアニストであるにも関わらず、この一週間ほど、まともにピアノの鍵盤に触れていない。なかなかに珍しい、というか、本格的にピアノを弾くようになってから、初めての出来事かもしれない。しかし、ここが重要な点だ。しつこいようだが、私は満足している。

ピアノというのは難儀な楽器で、日々の修練を必要とする「楽器道」の中でも、殊更に日々の努力を必要とする楽器なのである。
一日練習を休めば、その一日を取り返すのに一週間はかかる。
ピアノの世界でよく言われる事である。嘘ではないと思う。事実、たまに練習を一日ぐらいはサボる事があったが、やはりそれを取り返すのには、一週間近くかかった。そういうのが面倒くさくて、ならば毎日練習しよう、という部分もあったし、何より楽器の前に座る事は、私にとって日常茶飯事となっていたので、ここまでピアノに触れない日々に、不安がないか、と言われれば嘘になる。

でも、良い。
本ばかり読み、感想文を逐一書き、北海道で美味いものを食する生活。
今の私に必要なのはこれらの生活だったのであり、ピアノを弾く事ではなかったのかもしれない、そんな事を考える。もともと期待されるようなピアニストでは、私はない。私が上手くなろうと下手になろうと、その事は世間の大勢に影響を及ぼす事は皆無に近い。それよりも、少々不安定だった精神状態を、これらの日々によって麻痺させる事が、私には何より大事な事に思われた。
日々、様々な事を考える。愚にもつかないような事ばかりだが。
私は、きっと京都に帰ったら、前よりも下手かもしれないが、前よりもずっと良いピアノを弾けるような気がする。
嘘だと思った人、私の「プロフィール」の欄にあるスケジュールを参照にして、来週の土曜日に木屋町のメノモッソというお店に私のピアノソロを聞きに来てご覧なさい。もし、つまらなかったり、退屈だったら、私の後頭部に激し目のローリングソバットでも入れて帰って下さい。その日の機嫌によっては、やり返すかもしれませんが、必ず、良いものをお見せします。

さて、明日はTと二人で釧路です。いやあ、この遊び呆けっぷり。死ねば良いのに。

|

« 本州脱出目前 | トップページ | 箸休め的に更新します »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

どうやら、北海道でスローライフを楽しんでいるようね。どうせなら、北海道の北端まで行ってみるってのも面白そう。北方領土あたりでロシアの巡視艇とかに銃撃されたりして!?
私の方も、八月中は沖縄(旦那の実家)→千葉(私の実家)と渡り歩いています。
脳内会話、笑えました。

投稿: モトクロス | 2006年8月19日 (土) 12時03分

スローライフではなくて、フーリッシュライフですね。お馬鹿ライフ。北方領土返還のためには、まず日本人住民として鈴木宗男を送り込み、そして彼が疲れたときのために従軍慰安婦として辻元清美を送り込んでですね・・・
いかんいかん、またお馬鹿な事を。
沖縄はうらやましいです。旦那さん、沖縄出身なんですね。最近、「ユタ」という存在にとても興味があります。

投稿: ふくしまたけし | 2006年8月23日 (水) 18時21分

やっぱり北海道の人は、皆、ムネオとチハルが好きなのかねぇ。ムネオが今あるのは、あのよく出来た可愛い娘のおかげよね。今の若い娘にしては、父親に理解のある本当に偉い娘よね。私は沖縄のユタより、ケント・デリカットの故郷、ユタの方が興味があるわ。コヨーテがウロウロしているんでしょ?沖縄のユタは今や継ぐ人がいないため、消えつつあるのよね〜。

投稿: モトクロス | 2006年8月26日 (土) 00時00分

ムネオとチハルはそりゃあ大人気なんじゃないですかね。ムネオが娘に支えられている、という意見には激しく賛成です。
僕がユタに興味を持ったのは、花村萬月の短編集『虹列車・雛列車』という本の中の「金城米子さん」という話を読んだからなんです。まあ、凄まじいテンションで書かれていました。機会があれば是非ご一読を。

投稿: ふくしまたけし | 2006年8月28日 (月) 19時39分

ふ~ん。失礼ながら、私は花村萬月さんという方を今まで知らなかったけれど、この短編集の紹介文とこの方自身の紹介文を読みました。作品よりも、この人自身に興味が湧きました。何となく福島君に通じるところがあるような人ね。

投稿: モトクロス | 2006年8月31日 (木) 17時14分

実際にお会いしたことはないのだけれど、多分に素敵な人だろうと想像します。ちょっと恐そうですが。
僕に通じる、というよりは、僕が彼から影響を受けている、といった方が正確でしょうね。

投稿: 福島たけぼん | 2006年9月 1日 (金) 20時42分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 本州脱出目前 | トップページ | 箸休め的に更新します »