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2006年8月16日 (水)

本州脱出目前

午後三時、青森駅着。随分と有意義な寄り道をしながら、という自覚はあるが、のんびり進んで、東京を出てから既に二日目になる。

途中、盛岡から八戸までは、いわて銀河鉄道とやらの電車に乗らなければ、秋田を経由する相当に遠回りな経路になる事が判明し、いささか憮然としながらその区間の運賃約三千円を払う。私は時間はあるが金はないのだよ。心中独白なぞしていたら、八戸に着く直前に居眠りをしてしまい、起きた時には銀河鉄道は既に逆走を始めており、一時間強の時間を無為にする。仕方あるまい。

青森駅を降りてすぐに小便がしたくなり、便所を借りるべく駅ビルを彷徨く。エスカレーターに乗っていると私のすぐ前方に、夏の暑さなどお構いなしと言わんばかりにちちくりあうカップルあり。死ねば良いのにと本気で思う。これまた仕方あるまい。自ら選択した独りなのだから。

開き直って青森駅構内のドトールに入り、ここまでの経緯を一度文章に直すべく、携帯電話を手にする。周囲では当然のように青森弁が話されている。青森のイントネーションは英語に似ているように私には聞こえる。BGMの『イパネマの娘』が何となく癪に障る。

本日の目的地は北海道の森駅という所。どうやら五時前の青森発の列車に乗れば良い事がわかり、安堵する。出発の時には、上野駅を出て旭川駅に辿り着く事しか決めていなかった為、全てが行き当たりばったりだ。

長時間の車内での楽しみは、読書と脳内会話。後者に関しては多少説明が必要だ。私の近隣に座った人間と脳内でのみコミュニケーションを取る、という遊びだ。八戸から青森までの行程では、隣りに童貞臭そうな鉄道マニアと思しき青年と、正面には常に気だるそうな表情を浮かべる美女、というシュールな組み合わせ。お陰で読書も手につかなくなる。青年は持参したデジカメで窓外の風景を撮影したり、車内を物珍しそうに眺めたりと落ち着きがない。美女は途中で足が怠くなったのか、靴を脱いで足を椅子の上に乗せM字開脚のポーズ。スカートではないので下着こそ見えないが、ここの所ずっと禁欲的な生活をしている私には刺激が強過ぎる。やめてくれ。いや、やめないでくれ。どっちなんだ。

彼らと私の脳内で言葉という媒介なしに会話した結果、幾つかの事がわかる。青年の名はヒロシ、18歳、大学に入って初めての夏休みを使って東北を旅行している最中との事。東北ならではの電車や風景を写真に収めるのが目的らしい。勝手にしてくれ。美女は、サキ、29歳。青森に住む八年間付き合っている彼氏に会いに行く所との事。2ヶ月ぶりに会うのだそうだが、久々の再会も、まずは惰性に堕したセックスからコミュニケーションが始まるのがいつものお決まりのパターン。いい加減ウンザリしているから、久々の逢瀬に向かう道中であるにも関わらず浮かない顔をしているそうだ。私もそれに対して「ならばその問題点について真摯に話し合う事が必要なのでは」などと適当な事を言って(無論、脳内で)お茶を濁す始末。青森駅に列車が到着すると、それぞれがお互いに「それでは元気で」と言い合って(しつこいようだが、脳内で)刹那の出会いに終止符を打つ。再び私は独りになる。

昨晩、仙台では私には悪気がなかったのだが、人を一人(或いは二人)不愉快な気持ちにさせてしまった。生きているだけで他人に迷惑をかけるという事は重々承知の上であったが、気分は重い。

さて、本州を後にしよう。

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