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2006年7月12日 (水)

名城信男

スポーツの事を少し。

深夜にテレビを見ていたら特集を組まれていたスポーツ選手がいた。

名城信男、24歳のプロボクサーだ。

ボクシングというスポーツはとても好きだった。「好きだった」というのは、ここ最近、特にここ一年くらいのプロボクシング会は、私にとっては魅力的なものから不愉快なものへと変化していたのだ。理由は明確には書かない。誰が悪いのかは私にはわからないから。戦っている三兄弟は、ことによるとさほど悪くはないのかもしれない。しかし、彼らを取り巻く種々の環境は、大事な事をことごとく忘れている。少なくとも、彼らの父親は「昆虫よりバカ」だと思う。

いやいや、そんな事はどうでもいいや。別に悪口を書きたかった訳ではない。

名城信男、彼の事である。近々世界戦に臨むのだという。勝てば、あの辰吉丈一郎に並ぶ最年少記録での世界チャンピオンになる。

これだけ書けば、何ら変哲のない、ボクシングの極めて順調なサクセスストーリーだが、彼にはどうしても勝たなくてはいけない理由があるという。私が彼に強烈に興味を惹かれたのもそこだ。

彼は、リング上で人を殺めた。

ここまで極端な書き方は、勿論誤解も語弊も覚悟の上だ。事実に比較的忠実にいくならば、こういう事だ。名城は、日本チャンピオンへの挑戦者としてリングに上がった時、激戦の末に当時のチャンピオンを破った。そしてその敗れたチャンピオンは、試合の数日後にそのダメージが原因でこの世を去った。つまり、名城が殺したのだ。

事故、と簡単に割り切れるのはあくまで我々「ブラウン管のこちら側」の人間だけだ。名城は「殺した」という表現さえ使わなかったものの、自分は加害者だという意識は拭いきれなかったようだ。それは、日本チャンピオン防衛戦に勝利した後の彼の表情に見てとれた。安堵、などと生温いものではない。そして解放のような赦しもなく、ただただ試合に勝った事に彼は泣いていた、子供のように。

亡くなったチャンピオンの遺族達は、名城を許せないかも知れない。名城もまたその事実を決して忘れる事はないだろう。それでも彼は再びリングに上がる。ただひたすらに勝つために。

どうしても芸能ニュースの延長のような形で見てしまう私の品性の下劣さが自分でも情けないが、はっきり言ってTBSがバックに付いて不必要に盛り上がっている「ナントカ祭り」とは比べものにならないほどに、純粋な「勝負」がそこにはあるだろう。亡くなったチャンピオンの分まで頑張れ、とは思わない。ただ、名城、頑張れ、それだけを思う。試合の日が私も今からとても楽しみなのである。

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