停滞する街
政治ネタをぶつのはほどほどにしておかないといけないな、と昨日の日記を見返して思う。大して知りもしない事を偉そうに語ってはいけない。
さて、今日(日付の上では昨日)の昼間、川端通りを原付でゆっくりと北上していたら、最近にしては珍しいひどくダッサイ制服を着た修学旅行の中学生の一団を見かけた。女の子は時代錯誤なセーラー服、男の子はチンケなカッターシャツに黒いズボンといういでたち。肩から下げたカバンは紺色で、グレーの紐が付いている。もう少しお洒落な格好させてやれよな、どこの中学校だよマッタク。なんて思うのと同時に、私は彼らがどこの中学校の生徒か瞬時に、そして正確に理解した。彼らは東京都江戸川区立小岩第四中学校の生徒達だ。間違いない。私はその中学校の卒業生なのだから。多感な三年間を共に過ごしたその制服やスクールバッグを信号待ちの間に見ていると、何とも言えないような懐かしい気持ちにさせられた。私が中学生だった頃の修学旅行は広島の宮島と京都だった。未だに京都に来てるのか、世間の中学校は修学旅行で海外に行ったりするようなこのご時世だぜ、そんな事をぼんやりと考えた。
自分の中学校の頃や高校の頃の事を考えると、たまに途轍もなく恥ずかしくなる時がある。私は自意識過剰で自己顕示欲が強く、つまらないプライドの塊のような若者だった。友達も決して多くはなかった。しかし、と言うべきか、無論と言うべきか、未だに付き合いのある友人はいる。好むと好まざるとに関わらず、きっと彼らとの付き合いは一生続くのだろうなという予感も私の中にはある。私が通った小岩四中という空間の中での三年間は、現在の私という人間を形成するのに大きなウェイトを占めているのだ。あまりにも凡庸な事を言わざるを得ないのがいささか悔しいけれど。
原付に跨った私の傍らを通り過ぎていく10年ちょっと前の自分達に、私は何か声でもかけたい気分だった。しかし何も言葉は思い浮かばない。抽象的な概念だけが私の脳裏を掠めては消えていく。右手のアクセルに手をかけて私は黙って彼らの傍らを通り過ぎた。
君たちも私のようにいつか小岩を出るのだろうか。そして再びまた小岩に帰って来るのだろうか。きっと君たちは今は碌に勉強もしていないのだろうが、それで良いのだ。今はたくさん間違える時なのだ。お兄さんは今でも間違いだらけなのだから。
当たり前だが彼らは私の存在になど気付いていなかった。しかし私は偶然にも目にした十数年前の自分に重ねて、瞬間的にではあったが様々な事を思うに至った。私もなるべく早く小岩に帰ろう。新中川の川沿いで、またビールを飲もう。江戸川の河川敷を、のんびり自転車で走ろう。駅前のモツ焼き屋「大竹」で、立ち飲み屋「さくら」で、ガード下の「バー62」でクダを巻こう。私が目にした中学生たち、彼らの制服と同様に小岩という街は決して進歩しない。私も進歩しない。ゆるやかに、ゆるやかに、純粋な時だけが流れていくのだ。何も無いというのはかくも素晴らしき事か、と私は再び考えるのだ。
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コメント
まーじーでーすーかー。。。
同じ中学
オナチュウ。
我らオナチュウ!!
たまーに小岩帰るとき
四中脇の道を通る。
車だからほんの一瞬しか見れなかったけど
目を疑った彼らのいでたち
京都にも出現でつか。。。
微妙だね。
投稿: TSUN | 2006年5月29日 (月) 04時13分
わたしの出身中学もみかけるよ。しかも先生まで知ってる。わたしは話しかけたで。
先生はわたしをおぼえてなかったし生徒は純粋だったなあ。
不思議な感覚にとらわれるよね。
投稿: はたけやまさん | 2006年5月29日 (月) 05時47分
TSUNさんへ
オナチュウか。ぼくの脳裏を掠めたのは「オナ○ー中毒」という下衆い言葉。いやいや、すぐにそうやってしょうもない方向へ…
やっぱり小岩は変わらないよ。駅前にいくらエレベーターが出来ようと、少し大きめのマンションが乱立し始めようと、結局は小岩だからね。何だかちょっとだけインドみたいだ。
はたけやまさんへ
生徒は多分純粋じゃないぞ。中学生というのは汚れた人間になっていく準備の段階みたいなものだから。男子生徒の頭の中の八割五分ぐらいは女の子の事で一杯だ。そして「オナチュウ」だから。いや、下品禁止だ。
ぼくたちの「純粋なものへの憧れ」は、多分「自分が不純であること」の裏返しなんだろうね。「となりのトトロ」を何回も何回も繰り返し見てしまうのは、きっとぼくたちはもうトトロに会えないからだと思う。
投稿: 福島剛 | 2006年5月29日 (月) 12時48分
いきなりですが先輩(先輩と読んでいいのか^^;
がいたときの印象が強かった先生とかいますか?(しらない先生だと思いますけど
只今4中は耐震工事です。
コメントの返事待ってます。
投稿: 只今小岩4中の生徒。(中3) | 2006年7月24日 (月) 22時10分
後輩くん(さん?)へ
僕が四中に通っていたのは今から10年以上昔の事。時は流れてしまって先生も随分と変わった事と思いますよ。
担任は三年間ずっと松田先生という方でした。部活でお世話になったのは桶田先生という方。当然お二方とも既に四中にはいらっしゃらないと思いますが。
それよりもあなたは中学三年生、受験を控えた大切な夏休み前なんですから、こんなしょうもないブログなど見たりせずに、ひたすら太宰治の「人間失格」を読みふけったり、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を読んで主人公ホールデンに感情移入したりするべきだと思いますよ。ちなみに勉強はしなくていいと思います(超無責任)
投稿: 福島剛 | 2006年7月25日 (火) 00時03分
やっぱ知りませんね。
太宰治人間失格ですか。
読む時間があったら読んで見ます。
投稿: 只今小岩4中の生徒。(中3) | 2006年7月25日 (火) 12時15分
4中生へ
いやいや、太宰を読めなんてウソですよ。僕の言うことを真に受けてはいけません。
投稿: 福島剛 | 2006年7月27日 (木) 03時20分
いやそうでもないですよ
実際に太宰さんのはいい本ですし。
いいと思いますよ。
投稿: 只今小岩4中の生徒。(中3) | 2006年7月28日 (金) 21時46分