五月九日・MOJOWESTのリハーサル
本日はMOJOWESTバンド(sax:黒田雅之、b:鶴賀信貴、ds:古賀俊輝)のリハーサル。色んな曲をやったが、いやあ、とにかく『Airegin』難しかった。誰だ、最初にやろうって言い始めたのは。
私だ。
五時間ちょっと、ほとんど休憩なしでぶっ通しのリハーサル。たまにはこういうのも良い。バンド自体も少しずつ形が見えてきた。今日はたまたま調子が良かっただけなのかも知れないが、今日やった限りではドラムの古賀の成長が著しい。私も以前は(エラそうにも)「違う!ちゃんとやれ!」とか古賀を怒鳴りつけたりしていたが、今日は逆に「おお、コイツなかなかやるな・・・」とタジタジになりながらやるシーンもしばしば。私の方が助けられたりもして、シビアながらもとても楽しいリハーサルとなった。一緒にやるメンバーが段々良い感じになっていくのは、何よりも嬉しい。彼らにエラそうな事が次第に言えなくなる。「おいおい、福島さん、ちゃんとやって下さいよ~」なんて言われる日も決して遠くはない。負けじとこちらも努力しなくてはならない訳だ。
ここまで書いた所で我が身を鑑みて、これは何やら非常に不思議な感じなのだが、最近「誰それには負けたくない」みたいな感情は、音楽をやる上で殆ど抱く事はなくなった。私より数段上手いピアニストを見たとしても、「ああ、負けてられない」みたいな感情を、自分でも不思議なくらいに抱かないのだ。柔道をやっていた時は違った。自分よりも強い相手を見たら、絶対に負けたくなかった。彼がベンチプレスを80kg持ち上げるなら、私は85kg持ち上げてやる。そんな良い意味でも悪い意味でも子供じみた負けん気のようなものを発揮していたのに、こと音楽に関しては決してそうはならない。これは、柔道は「はっきりと勝ち負けが結果に表れ」、音楽は「明確な勝ち負けの基準が存在しない」という事にもよるのかも知れないが、それ以上に私の中の気持ちが変化しているというのもあるのだろう。
悪く言えば私は「諦めて」いる。私は世界一のピアニストにはなれない、どこかでそう思っているのだ。そして良く言えば「開き直って」いるのだ。しかし、その事で私は余計に音楽を好きになったし、そしてこれまで以上に音楽に執着することとなった。ならば、甘いかもしれないが私はそれで「良し」としたいと思っている。私は何か特別な感情を表現したい訳でもないし、他人に誇れるよう技術がある訳でもない。でも、誰かが「がはは」と笑いたい時に、そのお供となる音楽を奏でられたら最高じゃないだろうか。それぐらい単純にしか考えていない。まったく、きちんと音楽を考えている方々に対しては申し訳ない話なのだが、所詮私は「そんなモノ」なのだ。ケチな人間が奏でるクソのような音楽、それが私の音楽だ。卑屈になっている訳ではない。そんな物にも魂はある。ヘタクソなりに日々努力を重ねる。そもそもジャズってそんなに高尚なものか?と自己弁護を繰り返しながら。
そんな私のような人間と、正面から向き合ってくれるミュージシャンの方々に私は感謝したい。大して金にも名誉にもならないのにね。本当、みなさん人が良いというか物好きというか・・・でも極めてありがたく思っております。さてさて、明日は一日かけて今日のリハーサルで浮上した問題点を一人で解決していくつもりです。二日後(五月九日)に一緒にやる彼らと共に少しでも良い音楽が作れるように。世界一にはなれないかも知れませんが、私の住んでいる「ユピテルビル」一にはなりたいと思います。頑張ります。
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