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2006年2月14日 (火)

トリノオリンピック観戦記③

夏のオリンピックの一番の花形競技と言えば何であろうか?私個人としては、一番見ていて面白いのは柔道だ。自分が長い事やっていたというのもあるし、知っている選手も多い。何より、競技の仕組み自体を、他人に比べれば多少は知っているというのが大きい。単に「投げた!」と見るのではなく、「その前の絶妙な崩しがあったから良かったな」とか「試合の前半で足技を相手に意識させ続けたのが後半で効いてきたな」とか、少しぐらいは玄人的な見方が出来る、というのが楽しいのだ。年季の入ったサッカーファンが、フィニッシュのシュートだけでなくそこに至るスペースの作り方やパスの出し方を楽しく見れるのと似ている。とても楽しいのだ。

だが、もっと客観的に、かつ普遍的に判断しようと努めたならば、柔道は、夏のオリンピックにおいては決して一番の花形競技ではない。一番の花形競技、それは陸上、それも短距離走だと私は思う。様々な種目が「スポーツ」の様相を呈すのに対し、短距離走は極めて原始的だ。近代オリンピックの中に、古代ギリシャのオリンピア祭の芳香を還元する。問い掛けは驚くほどシンプルだ。

「世界一速いのは、誰だ」

この挑発染みた問い掛けに応えるように、世界中から駆け足自慢の人間が集い、そして世界中の人間の目がそこに注がれる。人間の根源的欲求、誰よりも速く走りたいという憧れを体現するのが、短距離走の王者だ。

冬のオリンピックにおいて、それに代わるのはスピードスケートだ。スキーは違うと思う。理由は後日書く。氷上とはいえ、「誰が一番速いのか」という問いに応えるのがスピードスケートだ。つまり、私の考えでは、冬季オリンピックの「顔」とも言えるのがスピードスケートなのだ。

長い前置きになったがついに始まったのだ、トリノオリンピックのスピードスケートが。今回は、現世界記録保持者の加藤丈治の滑りにも注目したいが、私が一番注目しているのは元世界チャンピオンの清水宏保の「負けっぷり」だ。彼はきっと負ける。そして多分、彼も心のどこかでそれをわかっている。それがわかりながら挑戦しようとする元チャンピオンの負け様、刮目して見ようではないか。勝者がいれば敗者がいる。昼があれば夜がある。光があれば闇がある。かつて誰もが背中を拝むしかなかった清水が、どんな気持ちで敗北の舞台に上がるのか、はっきり言って金メダルの行方の何倍も興味があるのだ。さあ、今から二巡目である。書いてる内に一巡目が終わった。固唾を飲む事にする。もちろんお酒も飲むが。

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